感動名作。なぜ、わんこの映画は泣けるものが多いのか。
3年前に発表されるや「とにかく泣ける」と話題になった村上たかし氏(45)のベストセラーコミックを映画化した「星守る犬」が公開されている。人生に挫折した「おとうさん」と愛犬ハッピーとの心温まるロードエロ動画ムービーで、東日本大震災前の東北で縦断ロケを敢行。主演の西田敏行(63)が哀愁ある演技をたっぷり披露している。
北海道の田舎町で、放置自動車から中年男の「おとうさん」(西田)と飼い犬「ハッピー」の死体が発見される。市役所職員の青年(玉山鉄二)は身元確認のため、偶然知り合った少女(川島海荷)とともに「おとうさん」とハッピーの道程をたどっていく。
昨年8月に北海道・石狩湾を望むカフェ「マウニの丘」で行われた撮影現場をのぞいてみた。失業から離婚を経てホームレスになった「おとうさん」が、旅の行く末を案じ、ハッピーをレストランのオーナー(三浦友和)に預けて去ろうとする場面だ。
「味わって食べろ。最後なんだぞ」。ハッピーに声をかけ、ジャーキーを食べさせる「おとうさん」。人情味と哀愁を帯びた西田の演技は、撮影スタッフの目頭も熱くさせていた。
現場には「実写化が楽しみ」という村上氏も訪れ、店の客として特別出演。本作のアイデアが浮かんだのは「十数年前に電光掲示板で偶然見かけたニュースがきっかけだった」と語る。
「車内で男性と犬の死体が発見されたという内容で、『美しい自然に囲まれて最期を暮らしていたのなら、きっと幸せだったのかも…』と、ふと思った」
「犯人に告ぐ」「イキガミ」などの社会派作品を発表している瀧本智行監督(44)は、「原作は人と犬との絆の物語でありながら、歯車が一度狂うとどんどん追いつめられてしまう現代社会への批判が巧みに織り込まれている。その点をきちんと描きたかった」と語った。
撮影は昨年夏に北海道、青森、岩手、宮城、福島で行われ、海岸や漁港など、震災前の美しい風景がフィルムに収められた。劇中で「おとうさん」がよく口ずさむ「三百六十五歩のマーチ」は、まるで被災者への応援歌のようにも響く。(伊藤徳裕)
放浪中に、おとうさん(西田敏行、右)がレストランオーナー(三浦友和)に愛犬ハッピーを預けようとする=昨年8月、北海道石狩市の撮影現場