いい映画かドラマが見たいな。
「第36回報知映画賞」の表彰式が12月21日、都内のホテルで開催され、主演男優賞を受賞した堺雅人、主演女優賞を受賞した永作博美ら受賞者が勢ぞろいした。「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」「八日目の蝉」で初の主演女優賞を受賞した永作は、「八日目の蝉」で共演した子役・渡邉このみちゃんを前に「この子がかわいい分、罪悪感もあって、本当に押しつぶされそうだった。いまだに思い出すと泣いてしまう」と感極まり、大粒の涙を流していた。
「八日目の蝉」は作品賞・邦画部門も受賞し、「震災後の公開で、心配したが多くの人に愛していただき、喜んでいる。震災で大切な方が犠牲になった東北の方から『私も自分の八日目の蝉を生きていきたい』というお言葉をいただき、感激した」(成島出監督)。原作者の角田光代も駆けつけ「自分が小説を書いたことも忘れて、泣けて大変でした」と受賞を祝福した。
今年1月に公開され、異例のロングランヒットを記録した「冷たい熱帯魚」は、俳優のでんでんが助演男優賞、園子温監督が監督賞を受賞し2冠を達成。でんでんは「よう、みんな元気かい。どうだい、かっこいいだろう」と演じた殺人鬼“村田”節をさく裂。すぐさま「こんな私を選んでくださって、審査員の皆さまもさぞ勇気が必要だったことでしょう。苦節30数年。還暦過ぎて、名誉ある賞をいただき、ありがとうございます」と恐縮しながら、喜び爆発。今年、大活躍だった園監督も「“こんな”映画に、こんな素晴らしい賞をいただき、まったく驚いております。映画を代表していただいたものを実感しています」と挨拶した。
宮本信子が「阪急電車 片道15分の奇跡」で助演女優賞を受賞し、「やりきれない思いや、立ち止まった空ろな時間を包み込んでくれる映画」。共演した中谷美紀は「あこがれの存在で、そばにいるだけに私を役柄に導いてくださった。とても懐の大きな方」と最敬礼だ。
現在99歳で国内最高齢の現役映画監督である新藤兼人が、“最後の作品”と公言する「一枚のハガキ」で特別賞を受賞。出演した女優の大竹しのぶから「100歳の記念作を撮ってほしい」と懇願されると、「運動して、足を丈夫にして、できればもう1本撮れれば」と引退撤回を示唆。「何もかもない貧乏なプロダクションで、金がないのが問題。何とか皆さんにおすがりしたいが、なかなか難しそう」と語った。遺作となった「大鹿村騒動記」の公開を見届けるように、今年7月この世を去った原田芳雄さんも特別賞を受賞。表彰式には“盟友” 石橋蓮司が駆けつけ「体調がすぐれないなか、きついスケジュールだったが、不調を微塵も感じさせず、常に明るくアイデアを出していた。今もすごみを感じる」と述懐していた。
がん宣告を受けた実父を追いかけるドキュメンタリー「エンディングノート」の砂田麻美監督が新人賞を受賞。「これからも頑張れと叱咤激励をいただいた思い。この賞に恥じないよう、いつかここにいる俳優の皆様に出演していただけるような監督になりたい」と初々しい決意表明だった。